「久しぶりにボンネットを開けたら、エンジンルームの中に黒い粒がたくさん落ちていた」「車内がなんとなく獣臭いと思ったら、シートの下に糞があった」といったトラブルは、実は珍しいことではありません。車は密閉された鉄の塊のように見えますが、ネズミにとっては寒さを凌げる暖かくて安全な隠れ家であり、特に冬場には格好のターゲットとなります。エンジンルームに入り込む最大の理由は、エンジンの余熱による暖かさです。帰宅直後の暖かいエンジンルームは、寒さに弱いネズミにとって最高の暖房器具となります。また、配線の被膜に使われている素材の一部(特に古い車種や特定のメーカー)には、ネズミが好む大豆由来の成分などが含まれていることがあり、これが誘引物質となって配線を齧られる被害も多発しています。配線を齧られると、エンジンがかからなくなるだけでなく、漏電による車両火災という最悪の事態を引き起こす可能性もあり、単なる汚れの問題では済まされません。一方、車内への侵入は、エアコンの外気導入口や、錆びて開いたフロアの穴、あるいはドアの開け閉めの隙を突いて行われます。車内に食べこぼしや菓子のカスが残っていると、嗅覚の鋭いネズミはそれを嗅ぎつけて執拗に侵入を試みます。もし車で糞を発見した場合の対処法ですが、車内であれば家の中と同様にマスクと手袋をして糞を除去し、アルコールで徹底的に拭き掃除を行います。布製シートに染み込んでいる場合は、スチームクリーナーや車内クリーニングの専門業者に依頼するのが無難です。エンジンルームの場合は、配線やベルト類に齧られた跡がないかを入念にチェックすることが最優先です。もし損傷が見つかれば、すぐに整備工場に持ち込み修理を依頼してください。清掃の際は、高圧洗浄機を無闇にかけると電子部品を壊す恐れがあるため、エアブローでゴミを飛ばしてから、固く絞った布で拭き取るのが安全です。予防策としては、車内に食べ物を放置しないことはもちろん、長期間乗らない場合は定期的にエンジンをかけて場所を動かす、エンジンルーム内にネズミが嫌がる忌避スプレーやミントオイルを撒く、駐車場所の近くに草むらやゴミ置き場がないか確認するなどが挙げられます。また、超音波発生装置を設置することも一定の効果が期待できますが、慣れが生じることもあります。車という密室でネズミと遭遇したり、走行中に予期せぬ故障が起きたりすることは命に関わる危険性もあるため、糞一つ見つかっただけであっても「たまたま入っただけ」と軽視せず、車の保管環境全体を見直す必要があるのです。