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跳躍力で見抜くコオロギとゴキブリの夜の遭遇戦
秋の夜長、部屋の隅で黒い虫が動く気配を感じ、恐怖に震えながら電気をつけると、そこには長い触角を持つ黒い昆虫が鎮座している。ゴキブリかと思って身構えた瞬間、その虫がピョンと高く跳ね上がり、視界から消える。これは、家の中に迷い込んだ「コオロギ」によくあるパターンの遭遇劇です。コオロギ、特にエンマコオロギやカマドウマ(便所コオロギ)などは、色や大きさがクロゴキブリと似ているため、誤認されやすい昆虫の筆頭です。しかし、彼らにはゴキブリにはない決定的な身体的特徴があります。それは、体長以上に発達した強靭な「後ろ足」です。ゴキブリの足は六本とも走行用に特化しており、太さにそれほど差はありませんが、コオロギの後ろ足は太ももの部分が大きく膨らんでおり、折り畳まれています。この足を見た瞬間に、相手がジャンパーであることが分かります。移動方法も、ゴキブリが床を滑るように直進するのに対し、コオロギは歩くのと跳ねるのを織り交ぜながら移動します。また、カマドウマに至っては、背中が極端に丸く盛り上がっており、翅がないため、ゴキブリのような平べったさは全くありません。彼らは湿った暗い場所を好み、床下や風呂場などに侵入することがありますが、ゴキブリのように菌を媒介したり、人間を噛んだりすることはありません。むしろ、ゴキブリにとっては天敵に近い存在であるアシダカグモなどの餌になることもあります。とはいえ、家の中で跳ね回られるのは不快ですし、衣類を齧ることもあるため、見つけたら外に出てもらいたいのが本音でしょう。捕獲する際は、ゴキブリのように上から叩こうとすると驚異的な反応速度でジャンプして逃げられるため、透明なカップや広口の瓶を上から被せて閉じ込める方法が有効です。その後、下敷きや厚紙を差し込んで蓋をし、そのまま外へ逃がします。もし跳ねる虫を見かけても、それはゴキブリが進化したわけではありません。冷静にその後ろ足を確認し、「秋の訪問者」として穏便にお引き取り願うのが、精神衛生上も最良の選択と言えるでしょう。