テクノロジーを活用した鳩対策として、超音波発生装置も広く市販されています。これは、人間には聞こえないが高い周波数の音波を出すことで、鳩に不快感を与えて追い払うという仕組みです。ネズミや猫除けとして知られる技術の応用であり、薬剤を使わず、見た目もスマートであることから、導入を検討する人も多いでしょう。しかし、科学的な観点や多くの実証実験の結果から言うと、超音波による鳩への忌避効果は、残念ながら「極めて限定的」あるいは「ほとんど効果がない」というのが定説となりつつあります。その最大の理由は、鳩の聴覚特性にあります。実は、鳩が聞き取れる音の周波数帯域は人間とそれほど大きく変わらず、むしろ人間よりも可聴域が狭い(低い音に敏感で、高い音には鈍感)という研究データが存在します。つまり、人間にとって不快なモスキート音のような超音波であっても、鳩にとっては「聞こえていない」か、あるいは「単なる背景雑音」程度にしか認識されていない可能性が高いのです。実際に、超音波装置の目の前で鳩が平然と巣作りを始めたという事例は枚挙に暇がありません。一部の製品では、鳩が嫌がる猛禽類の鳴き声や、仲間が危険を知らせる遭難鳴き声(ディストレス・コール)を大音量で流す機能がついているものもあり、こちらは聴覚的に認識されるため一時的な驚きを与えることはできますが、やはり「実害がない」と学習されれば効果は薄れます。さらに、都心部などの騒音が多い環境では、装置から出る音が周囲の雑踏にかき消されてしまい、鳩に届いていないことも考えられます。もちろん、全く効果がないとは断言できず、個体差や環境によっては効く場合もあるかもしれませんが、物理的なネットやスパイクに比べると確実性は著しく劣ります。高価な装置を購入して設置したのに全く意味がなかったという失敗を防ぐためにも、超音波はあくまで「気休め」や「他の対策の補助」程度に考え、過度な信頼を寄せないことが賢明です。鳩が本当に嫌うのは、正体のわからない音ではなく、物理的にとまれない環境や、目に見える天敵の存在なのです。
鳩が嫌がる超音波装置の効果とその科学的な限界