あれは私が大学進学を機に初めての一人暮らしを始めた春のことでしたが実家からの引っ越し荷物を運び入れたものの新しい生活の忙しさに追われ全ての荷物を片付けることができずにいました。特に季節外れの衣類や読み終えた本が入ったダンボール箱は部屋の隅に積み上げたままいつか片付けようと思いながら数ヶ月が経過していました。梅雨に入り湿気が部屋にこもるようになったある夜のこと私は部屋の隅からカサカサという微かな音が聞こえることに気づきましたが最初は気のせいだと思ったもののその音は明らかに積み上げられたダンボールの山から聞こえてくるのです。意を決して一番上の箱を持ち上げた瞬間私は声にならない悲鳴を上げました。箱の底と下の箱の間に黒光りする大きな影がササッと走ったからです。恐怖で動悸が止まりませんでしたがこのままにしておくわけにはいかず私は殺虫剤を片手に震える手で残りの箱を一つずつ確認していくことにしました。作業を進めるにつれ私の恐怖は絶望へと変わっていきました。長期間放置していたダンボールの隙間には黒い糞のような粒が点在しておりさらに最悪なことに波打つ断面の隙間に小豆のような形をした卵鞘と呼ばれる卵の袋が挟まっているのを見つけてしまったのです。それは一つや二つではなく保温性が高く適度な湿り気を帯びたダンボールは彼らにとって格好の繁殖場所となっていたのです。中に入れていた本も湿気で少し波打ち一部は虫食いの被害に遭っていました。私はその夜涙目になりながら全てのダンボールを解体し中身をビニール袋に移し替えゴミ捨て場へと走りました。この体験から私が学んだ教訓は引っ越しダンボールは決して収納家具の代わりにはならないということであり一時的な運搬用具として割り切り役目を終えたら直ちに処分しなければなりません。それ以来私はどんなに疲れていても荷物が届いたらその日のうちに箱を潰してゴミに出すことを徹底しています。あの時の背筋が凍るような光景は今でもトラウマとして私の心に深く刻まれており茶色の波打つ断面を見るだけで少し身構えてしまうほどです。これから新生活を始める皆さんには私と同じ過ちを犯さないようダンボールの早期処分を強くお勧めしますしあの恐怖は二度と味わいたくないものです。
引っ越し後のダンボール放置が招いた悪夢の体験