換気扇の掃除と聞くと、多くの人が、ベトベトの油汚れを落とす、面倒で大変な作業、というイメージを抱くでしょう。しかし、この億劫な掃除こそが、実は、換気扇からのゴキブリ侵入を防ぎ、彼らが棲みつかない環境を作るための、最も効果的で根本的な「ゴキブリ対策」となるのです。なぜ、換気扇の掃除が、それほどまでに重要なのでしょうか。その理由は、汚れそのものが、ゴキブリにとっての「ごちそう」と「隠れ家」を、同時に提供してしまっているからです。キッチン換気扇の内部には、調理の際に吸い込まれた油と、空気中のホコリが混じり合った、粘度の高い「油汚れ」が蓄積していきます。この油汚れは、ゴキブリにとって、非常に栄養価の高い、魅力的な餌となります。彼らは、このごちそうを求めて、換気扇に引き寄せられてくるのです。さらに、このベトベトの汚れは、彼らの体を巧みに隠し、天敵から身を守るための、最高のシェルターともなります。油汚れの中に潜んでいれば、人間の目にもつきにくく、安心して過ごすことができます。そして、この安全な場所を拠点として、夜な夜なキッチンへと繰り出していくのです。また、換気扇の内部でゴキブリが死んだ場合、その死骸が、次なるゴキブリを呼び寄せる誘引剤となる、という悪循環も生まれます。つまり、汚れた換気扇は、ゴキブリにとっての「レストラン兼ホテル」のようなもの。この快適な施設を放置しておくことが、彼らの侵入と定着を、自ら助長していることになるのです。定期的な換気扇の掃除は、単にキッチンを清潔に保つという目的だけでなく、ゴキ-ブリの餌場と隠れ家を根こそぎ奪い去り、彼らにとって何の魅力もない、生存不可能な環境を作り出すための、積極的な「防衛活動」なのです。フィルターの交換といった簡単なメンテナンスに加え、年に一度は、プロペラやファンを分解して、内部の油汚れを徹底的に除去する。その少しの手間が、不快な侵入者との遭遇率を、劇的に減らしてくれるはずです。