一日の疲れを癒すはずの入浴タイムに、ふと視線を上げると壁に張り付いているハート型の小さな黒い虫。それは多くの家庭で悩みの種となっている「チョウバエ」である可能性が極めて高いでしょう。体長数ミリメートル程度のこの虫は、見た目の不快感もさることながら、その発生源が私たちの想像以上に身近で不潔な場所にあるという事実が、さらなる嫌悪感を招きます。彼らの故郷はずばり、排水溝の奥深くや浴槽の下(エプロン内部)に蓄積した「ヘドロ汚れ」です。石鹸カス、皮脂、髪の毛などが混ざり合って腐敗し、ドロドロになった汚れ(スカム)こそが、チョウバエの幼虫にとって最高の餌場であり、ゆりかごなのです。成虫を一匹見つけたら、見えない場所では数十、数百の幼虫が蠢いていると考えなければなりません。スプレー式の殺虫剤で目の前の成虫を退治するのは簡単ですが、それは対症療法に過ぎず、発生源を断たなければ翌日にはまた新たな成虫が羽化して現れます。根本的な駆除を行うためには、まず排水溝の蓋を開け、ヘアキャッチャーだけでなく、その奥にあるトラップや筒状のパーツをすべて取り外して徹底的に洗浄する必要があります。使い古した歯ブラシや柄の長いブラシを駆使し、へばりついたヘドロを掻き出してください。そして、最も効果的かつ手軽な幼虫駆除法として推奨されるのが「六十度以上の熱湯」攻めです。チョウバエの幼虫は熱に弱く、熱湯を排水溝やエプロン内部、床の隅などにたっぷりとかけることで、薬剤を使わずに死滅させることができます。ただし、熱湯を配管に流す際は、塩ビパイプの耐熱温度(通常六十度から七十度程度)を考慮し、沸騰したお湯ではなく、給湯器の設定温度を最高にしたお湯を使うのが安全です。また、発泡性のパイプクリーナーや塩素系漂白剤を定期的に流し込み、汚れを分解・殺菌することも予防策として非常に有効です。特に浴槽のエプロン内部は素人が掃除しにくいブラックボックスですが、ここが汚れていると何をしてもチョウバエが減らないという事態に陥るため、年に一度は外して掃除するか、高圧洗浄機を使う、あるいはプロのクリーニングを依頼するなどの対策が必要です。チョウバエの発生は、風呂場からの「汚れが溜まっていますよ」という危険信号でもあります。虫を退治すること=汚れを落とすことと捉え、清潔なバスルームを取り戻すための徹底抗戦を開始しましょう。
風呂場に湧く黒い小バエの正体と徹底駆除法