家の中に蟻の行列ができていても、「まあ、ただの黒アリだから」と、比較的のんきに構えている方もいるかもしれません。しかし、もしその行列の正体が、家の構造を蝕む恐ろしい害虫「シロアリ」だったら、話は全く別です。両者は、名前に「アリ」と付くものの、生物学的には全く異なるグループに属し(シロアリはゴキブリの仲間)、その被害の深刻度と駆除方法は、天と地ほどの差があります。この二者を見分ける知識は、家の安全を守る上で絶対に不可欠です。まず、最も分かりやすい見分け方のポイントは、「胴体の形」です。私たちがよく知る黒アリは、胸と腹の間に、ハチのようにキュッと締まった明確な「くびれ」があります。一方、シロアリの胴体は、頭からお尻までが一直線につながった、いわゆる「寸胴体型」で、くびれがありません。次に、「触角の形」にも違いがあります。黒アリの触角は、途中で「く」の字に折れ曲がっていますが、シロアリの触角は、数珠が連なったような、まっすぐな形をしています。そして、もし「羽アリ」に遭遇した場合は、「羽の形」が決定的な証拠となります。黒アリの羽アリは、前後の羽の大きさが異なり、前の羽が後ろの羽よりも明らかに大きいのが特徴です。対して、シロアリの羽アリは、四枚の羽がほぼ同じ大きさ、同じ形をしています。また、シロアリの羽は非常に取れやすく、飛行後に体の周りに羽が散らばっていることが多いのも特徴です。さらに、「出現場所」も重要なヒントです。黒アリは、キッチンの砂糖など、餌を求めて人目に触れる場所に現れますが、シロアリは光と乾燥を嫌うため、人目に付く場所を行列で歩くことは稀です。もし、浴室や玄関の柱の根元など、湿った木材の近くで、土で固められたトンネル(蟻道)を見つけたら、それはシロアリの存在を強く示唆する危険なサインです。これらのポイントを総合的に判断し、もし少しでもシロアリの疑いがある場合は、もはや猶予はありません。速やかに専門の駆除業者に調査を依頼してください。
その蟻、本当にただの蟻?シロアリとの見分け方