鳩が休息場所を選ぶ際、最も重視するのは「安定性」と「視界の良さ」です。彼らは天敵の接近をいち早く察知でき、かつリラックスして羽を休められる平らで安定した足場を好みます。この習性を逆手に取り、鳩が嫌う「不安定でとまりにくい環境」を作り出すのが、テグス(釣り糸)やワイヤーを用いた対策です。ベランダの手すりや屋根の端など、鳩が最初に着地しようとする場所に、細いテグスをピンと張るのではなく、少し高さを設けて張ることで、鳩の着地を妨害します。鳩が手すりにとまろうとして降下してきたとき、目に見えにくい細い糸が体に触れたり、足場を確保できずにバランスを崩したりすると、彼らは驚きと不快感を感じて飛び去ります。特に、手すりから八センチから十センチほどの高さにテグスを張るのが最も効果的とされています。これは鳩の足の長さや着地姿勢を計算した高さであり、糸をまたぐこともくぐることもできない絶妙な位置となります。テグスのメリットは、ネットやスパイクに比べて目立ちにくく、建物の外観や景観を損なわない点にあります。また、安価に入手でき、設置も比較的簡単であるため、初期段階の対策として導入しやすいのも魅力です。しかし、ここでも注意が必要なのは、テグスの張り方です。あまりにピンと張りすぎると、カラスなどの大型の鳥が乗れてしまったり、鳩自体も糸の上にとまるコツを学習してしまったりすることがあります。逆に、バネやゴムを使って少し弾力を持たせたり、二重三重に張って複雑な構造にしたりすることで、より「不安定さ」を強調し、鳩に攻略されにくくすることができます。また、テグスが見えにくすぎると、鳩が気づかずに衝突して怪我をする可能性があるため、あえて少し目立つ色の糸を使ったり、キラキラする素材を混ぜたりすることも検討すべきです。鳩は安定を求める生き物であり、足元がグラグラする場所や、何かに接触する違和感のある場所には長居したがりません。この「居心地の悪さ」を物理的に演出することが、テグス対策の神髄なのです。
鳩が本能的に避ける不安定な場所とテグスの活用法