「換気扇を24時間つけっぱなしにしておくと、ゴキブリが入ってこなくなる」という話を、耳にしたことはありませんか。これは、インターネット上などで、しばしば語られるゴキブリ対策の一つですが、果たして本当に効果があるのでしょうか。その真偽と、メリット・デメリットを正しく理解しておきましょう。まず、この説の根拠となっているのは、主に二つの理論です。一つは、「空気の流れが、ゴキブリの侵入を物理的に妨げる」というものです。換気扇が常に作動していれば、外から中へ向かう空気の流れが生まれるため、それに逆らってゴキブリが侵入するのは困難になる、という考え方です。特に、体の小さなチャバネゴキブリなどに対しては、一定の効果が期待できるかもしれません。もう一つの理論は、「換気扇を回し続けることで、室内の湿度が下がり、ゴキブリが棲みにくい環境になる」というものです。ゴキブリは、湿度の高いジメジメした環境を好みます。常に換気を行うことで、キッチンや浴室の湿気を効率的に排出し、乾燥した状態を保つことは、ゴキブリの定着を防ぐ上で、確かに有効な対策と言えます。では、この「24時間回しっぱなし作戦」は、完璧なゴキブリ対策なのでしょうか。残念ながら、いくつかの限界とデメリットも存在します。まず、大型で飛行能力の高いクロゴキブリは、多少の空気の流れに逆らってでも、強引に侵入してくる可能性があります。また、換気扇が止まっているわずかな時間や、他の経路からの侵入を防ぐことはできません。そして、最大のデメリットは、「電気代」と「換気扇の寿命」です。24時間稼働させ続ければ、当然のことながら電気代はかさみますし、モーターへの負担も増え、換気扇の寿命を縮める原因にもなりかねません。結論として、換気扇の24時間稼働は、ゴキブリ対策として「ある程度の効果は期待できるが、万能ではない」というのが、現実的な評価と言えるでしょう。これだけに頼るのではなく、フィルターの設置や、侵入口の封鎖といった、より根本的な物理的対策と組み合わせることで、初めてその真価を発揮する、補助的な戦術と位置づけるのが、最も賢明な考え方です。