米びつを開けたとき、真っ白なお米の中に小さな黒い虫が混じっているのを見て、「ゴキブリの赤ちゃんが湧いた!」と悲鳴を上げた経験はないでしょうか。お米という神聖な場所に見慣れぬ黒い虫がいればパニックになるのも無理はありませんが、その虫の多くは「コクゾウムシ」というゾウムシの仲間です。体長は二ミリから三ミリ程度と非常に小さく、よく見ると頭の先が象の鼻のように長く伸びているのが特徴です。ゴキブリの幼虫とはサイズ感こそ似ていますが、そのユニークな顔つきを見れば一目瞭然です。コクゾウムシは、玄米や精米の中に卵を産み付け、幼虫は米粒の中で育ち、内側から食い破って成虫となって出てきます。つまり、外部からゴキブリのように侵入してきたのではなく、買ってきたお米の中に最初から卵が含まれていたか、保存中に成虫が入り込んで産卵したものが孵化したのです。彼らは人を刺すこともなければ、病気を媒介することもありませんが、大切なお米を食害し、品質を劣化させます。もしコクゾウムシを見つけたら、そのお米を全て捨てる必要はありません。天気の良い日に新聞紙の上にお米を広げて天日干しをすれば、光を嫌うコクゾウムシは逃げ出していきます。ただし、食味が落ちている可能性はあるため、気になる場合は処分するか、よく洗って食べるかの判断になります。一方、もし本当にお米の中にゴキブリの幼虫や糞(黒くて小さな粒)が混じっていた場合は、衛生的に問題があるため、そのお米は諦めて処分し、米びつ周辺の清掃と駆除を徹底する必要があります。コクゾウムシの発生を防ぐには、お米を十五度以下で保存することが有効です。常温で保存するのではなく、密閉容器(ペットボトルなど)に入れて冷蔵庫の野菜室で保管すれば、虫の活動を抑え、お米の酸化も防ぐことができます。「黒い虫=全てゴキブリ」という図式を一旦脇に置き、その長い鼻を確認することで、冷静な対処とお米の救出が可能になるのです。