あれは、私がガーデニングに夢中になり始めた最初の年の梅雨時のことでした。丹精込めて育てていたペチュニアの柔らかい花びらが、ある朝、何者かに無残にもかじられているのを発見したのです。悔しさと怒りに震えながら犯人探しを始めると、植木鉢のすぐそば、湿ったレンガの隙間に、細長い奇妙な貝が何匹も潜んでいるのを見つけました。煙管のような形をしたその貝が「キセルガイ」という名前だと知ったのはすぐのこと。カタツムリの仲間だという情報を見て、私は確信しました。「こいつが犯人に違いない!」と。その日から、私のキセルガイに対する殲滅作戦が始まりました。見つけては割り箸でつまんで駆除し、彼らが隠れていそうな落ち葉や石の下を毎日ひっくり返しました。しかし、どれだけ駆除しても、ペチュニアへの食害は一向に止まりません。私の心は焦りと疑念でいっぱいになりました。「あんなに駆除しているのに、なぜ被害が続くんだ?」と。途方に暮れた私は、もう一度、今度はもっと詳しくキセルガイについて調べることにしました。すると、意外な事実が次々と明らかになったのです。キセルガイは健康な植物の葉をほとんど食べないこと。そして、植物に大きな被害を与えるのは、夜行性で日中は土の中などに隠れているナメクジやヨトウムシの方が多いこと。その夜、私は懐中電灯を片手に、息を殺して庭に出ました。そして、ペチュニアの葉をまさに今、むさぼり食っているぬらぬらと光る大きなナメクジの姿を発見したのです。真犯人は、そこにいました。これまで私が敵視し、駆除し続けてきたキセルガイたちは、おそらく濡れ衣だったのです。彼らはただ、真犯人であるナメクジと同じ湿った場所を好んでいただけでした。この一件以来、私は庭の生き物たちを一方的な知識で判断しないようになりました。今でも庭でキセルガイを見るたびに、自らの早とちりを思い出し、少しだけ申し訳ない気持ちになるのです。