近年、宿泊施設や一般家庭での被害が急増している「トコジラミ(南京虫)」ですが、その赤褐色で平べったい姿は、チャバネゴキブリの幼虫と非常によく似ています。しかし、この二つを見間違えることは、その後の被害規模を考えると致命的なミスになりかねません。どちらも不快な害虫であることに変わりはありませんが、トコジラミは人間の血液を吸う吸血害虫であり、その痒みは筆舌に尽くしがたいものがあります。見分けるためのポイントはいくつかあります。まず「形」ですが、ゴキブリの幼虫はお尻の方に向かって細くなる流線型をしているのに対し、トコジラミはリンゴの種のような、より円形に近い楕円形をしています。また、トコジラミにはゴキブリのような長い触角は見当たりません。次に「動き」です。ゴキブリの幼虫は光を当てると猛スピードで逃げ惑いますが、トコジラミの動きはカサカサというよりはモゾモゾとしており、そこまで速くはありません。そして最大の違いは「見つかる場所」です。ゴキブリはキッチンや水回りを好みますが、トコジラミは寝室、特にベッドのマットレスの縫い目、布団の縁、カーテンの裾、壁の隙間などに潜んでいます。もし寝室の枕元で赤茶色の虫を見つけ、さらに最近体に原因不明の赤い発疹や激しい痒みがある場合は、ゴキブリではなくトコジラミを疑うべきです。トコジラミの糞は「血糞」と呼ばれ、黒いインクを垂らしたようなシミが寝具に残るのが特徴です。ゴキブリ用の殺虫剤の多く(特にピレスロイド系)は、抵抗性を持ったトコジラミには効果が薄いことが多く、バルサンを焚いても隙間の奥に隠れた彼らには届かないことがあります。トコジラミと確定した場合は、専門業者による駆除か、専用の薬剤と熱処理(スチームクリーナーなど)を組み合わせた徹底的な対策が必要となります。「ただのゴキブリの子供だろう」と高を括って放置していると、爆発的に増殖し、家中の家具を廃棄しなければならない事態に陥ることもあります。寝室で似た虫を見つけたら、絶対に素手では触れず、セロハンテープで捕獲して保管し、専門家に同定してもらうことが、悪夢を食い止めるための分水嶺となります。
赤い悪夢トコジラミとゴキブリの幼虫を混同するリスク