家にいるエビみたいな虫、その正体はヨコエビ
ある日、観葉植物の植木鉢の周りや、キッチンのシンク下、あるいは浴室の隅といった、ジメジメした場所で、体長数ミリ程度の、白っぽく半透明で、丸まった背中がまるでエビのように見える虫が、ピョンピョンと跳ねているのを見つけたことはありませんか。多くの人が、その奇妙な見た目と動きから「何の虫だろう」と首をかしげますが、その正体は「ヨコエビ」の一種である可能性が非常に高いです。ヨコエビは、その名の通り、エビやカニと同じ甲殻類の仲間です。しかし、彼らは水中で生活するのではなく、湿った陸上で生活することに適応した、非常に珍しいグループなのです。特に、家屋周辺でよく見られるのは、「オカトビムシ」と呼ばれる種類で、トビムシのような跳躍力を持つことから、その名が付けられました。彼らが私たちの家の中に現れる理由は、ただ一つ。そこに、彼らが生きるために不可欠な「湿気」と「餌」があるからです。彼らの主食は、腐った落ち葉や植物、カビ、あるいは他の虫の死骸といった有機物です。そのため、常に湿っていて、腐葉土や有機肥料が使われている観葉植物の土壌や、湿気でカビが発生しやすい浴室、食べ物のカスが落ちている可能性のあるキッチンのシンク下などが、彼らにとって最高のレストラン兼住処となるのです。つまり、あなたの家にこのエビみたいな虫が現れたということは、その場所が「過度に湿っており、有機的な汚れが溜まっている」という、住環境の悪化を知らせるサインに他なりません。幸いなことに、ヨコエビは人間を刺したり、病気を媒介したりすることはなく、直接的な害はありません。しかし、その存在は、より深刻な害虫であるゴキブリや、健康被害をもたらすカビの発生を招く、危険な環境の前兆とも言えるのです。