現場で多くのお客様から「この小さな黒い粒は何ですか」という質問をいただきますが、その多くは残念ながらゴキブリの排泄物です。プロがゴキブリのフンを見分ける際に最初に見るのは、その「配置」と「付着状態」です。ゴキブリは壁の隙間や棚の角、扉のヒンジ部分といった狭い場所に身を潜める習性があり、そうした場所にはフンが「こびりついた」ように残ります。単なる土埃や砂であれば、息を吹きかけたり軽く叩いたりすれば落ちますが、ゴキブリのフンは油分を含んでいるため、垂直な壁面や天井にすらしっかりと付着していることが多いのです。また、小型のチャバネゴキブリの場合は液体状のフンをすることもあり、それが乾燥して黒い点々のシミのようになっていることもあります。これは「フォーカルポイント」と呼ばれ、彼らが集団で長時間過ごしている証拠であり、非常に強力な繁殖の兆候です。一方、大型の種であれば固形のフンになりますが、ここでの見分け方のコツは、フンの表面にある縦の筋を確認することです。これはゴキブリの消化管の構造に由来するもので、他の昆虫や動物のフンにはあまり見られない特徴です。また、フンの周辺に黒い液体の汚れが飛び散っている場合、それは下痢便のような状態で、栄養状態や個体数の多さを物語っています。なぜこれほどまでに見分け方が重要かと言えば、ゴキブリのフンは単なる汚れではなく、喘息やアレルギーの原因となるアレルゲンを大量に含んでいるからです。さらに、フンの中にはサルモネラ菌や赤痢菌といった食中毒を引き起こす病原菌が潜んでいるリスクもあります。見分けた後に掃除をする際は、決して掃除機で吸い込んではいけません。粉砕されたフンの粒子が空気中に舞い上がり、それを吸い込むことで健康被害を招く恐れがあるからです。正しく見分けた後は、使い捨ての手袋とマスクを着用し、ペーパータオルにアルコールや希釈した漂白剤を染み込ませて、静かに包み込むようにして拭き取ることが鉄則です。フンは彼らからの「ここに住んでいます」というメッセージであり、そのサインを正しく読み解くことが、清潔で安全な暮らしを守るための第一歩となるのです。
害虫駆除のプロが教えるゴキブリのフンの見分け方と危険性