それは記録的な猛暑が続いていたある八月の深夜、喉が渇いて目が覚めた私が、水を飲もうと一階のキッチンへ降りていった時のことでした。暗闇の中で壁のスイッチを押し、照明が灯った瞬間、視界の端でカサカサという乾いた音が響きました。何かがいる。直感的にそう悟った私の視線の先には、シンクの横に張り付いた巨大な黒い影がありました。人生で何度も経験してきたはずの、しかし何度経験しても慣れることのない、あの忌まわしいゴキブリの姿です。その瞬間、私の眠気は一気に吹き飛び、全身の毛穴が開くような緊張感が走りました。家の中にゴキブリが出たら、そこからは自分との戦いです。私は相手を刺激しないようにゆっくりと一歩後退し、流し台の下にあるはずの殺虫剤へと手を伸ばしました。しかし、運悪くスプレー缶は空。絶体絶命の状況で、私はふと、インターネットで見た洗剤でゴキブリを倒せるという知識を思い出しました。私は目の前の強敵から目を逸らさないまま、食器用洗剤のボトルを手に取り、意を決して接近しました。心臓が口から飛び出しそうなほどの鼓動を感じながら、緑色の液体を一気に浴びせました。ゴキブリは驚異的なスピードで逃げようとしましたが、粘り気のある洗剤がその機動力を奪い、数秒後には力尽きたようにひっくり返りました。勝った。勝利の安堵感とともに、私は深い溜息をつきました。しかし、本当の戦いはここからでした。ゴキブリが出たら、その後の清掃こそが住まいの衛生を左右します。私は軍手を二重にはめ、マスクを装着して、大量のティッシュでその個体を回収しました。袋の中へ落とし込む瞬間の嫌な重みは、今思い出しても背筋が凍ります。その後、私は深夜の二時だというのに、キッチンの床と壁をアルコールで磨き上げ、さらに周辺の家具をすべて動かして、他にも潜んでいないかをライトで照らして確認しました。幸い、他の個体は見つかりませんでしたが、棚の奥で古い段ボールの切れ端を見つけたとき、自分の管理の甘さを痛感しました。あの日以来、私のキッチンは以前よりもはるかに整然としています。段ボールは即座に処分し、夜寝る前には必ずシンクを乾拭きし、一滴の水も残さないように徹底しています。あの真夜中の遭遇は、私にとって恐怖の記憶であると同時に、丁寧な暮らしの重要性を教えてくれた厳しい洗礼でもありました。ゴキブリが出たら、それは家を磨くチャンスだと思い直すことで、私はようやく、あの不快な影へのトラウマを乗り越えることができたのです。
真夜中にゴキブリが出たら独身生活で培った撃退術